2025年12月30日火曜日

OPアンプを使ったヘッドホンアンプの実験

OPアンプを使ってヘッドホンアンプを作るのは,けっこう世の中の定番のようである.その関係でちょっとした実験をやったのは2016年2月のことのようだ(古い)

ちょっと思い出したので,まとめなおしておく.

きっかけは トラ技2015年10月号 に載っていたヘッドホンアンプの回路.出力電流を十分に取るために,電流バッファとしてエミッタフォロワのプッシュプル,いわゆるダイヤモンドバッファを使うのはわりと常道.加えて,ポタアンを想定した低電源電圧でスイングできる電圧範囲を十分に取るために,フルスイングさせるにはどうするか,というところで,ブートストラップという回路が紹介されていた.これを含めて,自分でも実験してみたときの記録.

まずは OP アンプにシンプルにダイヤモンドバッファを加えた回路.これが基本になる.

OP アンプは NJM2737.ダイヤモンドバッファは2SA1015/2SC1815.ゲインは 6 dB に設定.

電源は単3電池2本を直列にしていて,開放電圧で実測 3.1 V.これを 10 kΩ 2本で分圧した中点をグラウンドとして使用.電源のパスコンは 470 μF × 2.やはりポタアン前提だと電池 2 本,できればニカド系 2 本の 2.4 V (±1.2 V) で動くようにしたいところだ.NJM2737 は 1.8 V 以上で使えるフルスイング OP アンプなので,その点は都合がよい.電池2本の直列ならそのまま正負電源にできるのだが,電源スイッチが両切りになるのが気に食わないし,電源電圧の自由度のためにも (4.5 V動作とかもできるわけだし) 単電源のスプリットで行きたいところだ.

テスト用入力信号は PC で 1 kHz の正弦波を作って,ヘッドホン端子からの出力をそのまま入力している.出力はとくに負荷抵抗とかをつながずにオシロで直接観測している.

NJM2737 自体はフルスイングタイプなのだが,ダイヤモンドバッファのところの制約でフルスイングにはまったく届かず.具体的な記録 (数値とか波形の写真とか) がないが,入力を上げると簡単にクリップしたようだ.まあ,ダイヤモンドバッファの常識的な動作であれば 1.9 Vpp あたりが上限になりそうではある (電源電圧の 3.1 V から接合ロス 0.6 V を2段分引き算).

NJM2737 の電源電圧は 6 V までなので,OP アンプを OPA2604 (リンク先は1回路版の OPA604) に挿し換えて電源を 9 V (±4.5 V) に上げるとクリップしなくなったようなので,やはりバッファでクリップしているのだろう.ちなみに,604系はフルスイングではないし,±4.5 V 以上の電源が必要だが,10 mA 程度は出力できるので,電源電圧が確保できるならバッファレスでふつうのヘッドホンくらいはドライブできるアンプになる.

NJM2737 はフルスイングとはいっても出力電流は数 mA しか出せないのでバッファなしでヘッドホンをドライブするのはちと厳しい.OPA2604 は出力電流は取れるが,9 V 以上の電源が必要なので,ポタアンにはどうかという感じ.

ということで,基本回路は大丈夫そうなので,OP アンプを MUSES8832 に変更.フルスイングな高音質 OP アンプということらしい.電源は ±1.35 V からなので,ニカド系ではちと厳しいが,アルカリ電池ならいけるか.

まずは SBD を用いることでダイヤモンドバッファのところの制約を回避する回路の実験.回路は nabeの雑記帳さんのもの を借用.

SBDなしだと


1.5 Vpp くらいを上限に出力がクリップしてくる.これが,SBD を入れるだけで

2.1 Vpp くらいまではクリップしなくなる.効果は歴然としている.とはいえ,手持ちのヘッドホンやイヤホンは低インピーダンスのものしかないので,ここまでスイング電圧を高くしたら耳がおかしくなる(苦笑) というか,1.5 Vpp だって耳が死ぬ(笑)

次は,上記トラ技で小川敦氏が紹介しているブートストラップ回路.リンク先は記事の1ページ目だけ.回路図はほぼこれに準拠.もちろん,この号は自分で買っていて,記事も全部読んでます.CRDと大容量コンデンサを組み合わせる.出力はなんと 2.6 Vpp までクリップしない.

これは恐れ入ったという感じ.ただまあ,実験回路はこのありさまである.

動けばいいのではあるが (←エンジニア的にはダメだろ←お前はエンジニアじゃないだろ).スペースの関係もあって,上半分はブートストラップ回路を入れてみた.下半分は SBD の回路のまま.なお,入力信号は PC のイヤホン出力を使っているが,クリップさせるには信号レベルが足りず,この回路の時にはNFB 抵抗を変えてゲインを上げている.

見ての通り,このブートストラップタイプはコンデンサが場所を食うというのが大きな問題ではある.

上記の nabeの雑記帳 さんには CRD と SBD を用いる別の回路も紹介されていたので,こっちも試してみたところ,2.4 Vpp の出力が得られた.こちらは大きなコンデンサを使わなくて済むので,低電圧駆動ということであればこの辺りが最適解なのかもしれない.

やはり 3 V とか 2.4 V とかいうのがそもそもの間違いなのかもしれない.たとえば 5 V あれば,こういうトリッキー?なテクを労さなくても,単純なバッファで十分なはずである.

ということでシンプルに作ってみたのがこちら.

OP アンプだけ MUSES8832 にして,回路自体は最初のに戻した.電源は 5 V として,グラウンドラインはレールスプリッタ TLE2426 で作るように変更.

上の状態ではちょっと終段のバイアス電流が大きすぎ (約 60 mA) なので,抵抗をちょっと変更して 1 mA くらいの B 級動作にして,さらに出力のカプリングコンデンサをなくしてしまったのがこちら.

とまあ,回路的に比べてはみたものの,音についてはハッキリ言ってまったく違いがわからない(苦笑) 

以上,2016年2月の実験記録.今作るならどうするかなあ.少なくともバッファ入れてどうの,っていう回路にはしないだろうなあ.OP アンプの出力そのまんまか.あるいは逆に振り切って,バッファだけというのを作るかも.手持ちのヘッドホン類でゲインが必要なものなんてないから.

はて.コントロールアンプに組み込んだヘッドホンアンプ部はどうしてたっけな.単純なエミッタフォロワくらい入れたかなあ.覚えてないや(苦笑)

しかし,もうポタアンなんて作んないかもなあ.外で音楽聴くのって,もうワイヤレスイヤホン一択になってしまったのでねえ… 自室でヘッドホンはまだあるけど,そういうところでは物量投入というか,電源でもなんでも自由に設定できるわけで,低電圧にこだわる意味もないし.

ということで,実験記録でした.



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